大河ドラマ 麒麟がくる【第44回 本能寺の変】 感想

「我が敵は、織田信長と申す。」

目次

今回のあらすじ 

前回最後の御乱心は家康の動きを見るための芝居でした。
別室で今後の展望について語る信長から、反信長の旗手になっている義昭を討てと言われる光秀。
光秀と共に戦無き世を作りたいと語る信長。
義昭は殺せない。戦によって信長は変わってしまったという光秀に対して自分を変えたのは光秀であり、光秀が拒否するなら自分で義昭を殺す。
歩みは止めないと決意を伝えます。
一方二人の周囲では光秀が万が一事を起こしたらどうするか各々考え始めます。
細川は既に秀吉に近づいており光秀が事を起こす可能性を秀吉に知らせ、朝廷は静観の姿勢を決めます。
藤田伝五明智秀満斎藤利三の前で謀反を宣言する光秀。
謀反の準備を進めていると菊丸が訪ねてきて光秀は謀反が成功したあかつきには家康に協力してほしいこと、協力してくれる者たちと二百年、三百年続く太平の世を築きたいこと、万が一の時は家康に後を託したいことを伝えます。

6月2日早朝、本能寺に兵を進めた光秀は信長を討ちます。
その後、光秀に近しい勢力も味方せず光秀が山崎の戦いで敗れたことがナレーションにて語られると舞台は本能寺の変から三年後に。
帝や義昭が本能寺の変を振返り、義昭の下を訪ねていた駒から光秀生存説が語られます。
その後、駒が町中を歩いていると光秀らしき人物を見つけ後を追うも光秀かどうかを確認することは出来ませんでした。
最後に光秀が馬に乗って駆けるシーンにて終わります。

感想 

前回最後の激怒がまさかの芝居だったとは驚き!
激怒するどころか上機嫌な信長は相変わらず光秀が大好きな様子。
ここでちらっと長曾我部問題に触れてきましたね。
今作は手当たり次第に色々な説を小出しにしてくるスタイル。
しかし、結局黒幕はいなくて光秀の独断。
あれだけ光秀を気に入っていたようですが中立を選ぶ帝。
鎌倉~室町~戦国と武家政権を渡り歩いてきた朝廷の処世術で強かでしたね。

義昭を殺せと迫る信長ですが別に今更義昭は殺す必要ないですよね。
もう織田政権は圧倒的ですからわざわざ殺害しなくても毛利を倒した後にどうとでもなるはず。

信長は光秀謀反を知った時はショックを受けながらも『光秀に殺されるならそれでもいい』という感じでしたね。
本作の信長は最後まで光秀が大好きでそういう描き方は面白いと思いました。
ただ、私としては本能寺の変から滅亡までを描いてこそ光秀の物語だと思っていたのでナレーションというのは残念。
味方が全然出てこないことに思い悩むシーンとか夢を追い求める光秀と周りとの温度差とかもっと描いて欲しかったですね。

光秀は本能寺の変後に家康や協力してくれる者達と二百年~三百年続く太平の世を模索していたみたいですが有力大名の連立政権方式で長期の太平の世は難しいですね。
また、信長が道を誤ったといっても圧制を敷く暴君になった訳ではないのに討つ必要あるのかな~。
せっかく天下統一に王手をかけている信長を殺したら麒麟が来る世は遠のきます。
そもそも信長はこの時49歳なので放っておいても10年~20年で死ぬでしょうから信長を殺すのではなく天下統一後の政治構造を進言すればいい。
長期の太平の世にはその方がずっといいと思うのですが・・・・
麒麟を呼ぶために謀反を起こすのであれば、例えば信長の大陸進出策に反対して~というふうに麒麟がいつまでたっても来ない状況になり信長を討つというのはわかるのですが今作の光秀の謀反理由は個人的には腑に落ちませんでした。

考察

最後の馬で駆ける光秀をどう見るかですが私はあのシーンは抽象的な表現で本作の光秀は山崎の戦いで死んだと思っています。
理由は、もし生きていたとすると一族郎党全て犠牲にした上に「麒麟はこの十兵衛が連れてくる」と言っておきながら実際に天下統一をしたのは秀吉で自分は隠遁生活。
これではあまりにダサい
まだ、天海として家康のそば近くにいるならともかく隠遁はないでしょう。
今作の光秀は夢追い人ですから夢を追ってパッと散った方がストーリーとしてはいいと思います。

史実ネタ

今回はナレーション部分だった本能寺の変から山崎の戦いのことを書きたいと思います。
本能寺の変の後、光秀は織田政権の本拠地安土城へ進軍します。
しかし、この頃から光秀の想定外は起こります。

想定外① 山岡景隆恭順拒否

京から安土へ進むためには瀬田の唐橋を通る必要があります。
光秀はこの瀬田の唐橋周辺を収めていた山岡 景隆へ恭順するように迫ります。
小領主に過ぎない景隆は従うだろうと思いきや景隆は恭順を拒否。
それどころか景隆は瀬田の唐橋を焼き落してしまいます。
そのため光秀は瀬田の唐橋再建までの3日間京から動けなくなってしまいました。

想定外② 細川藤孝協力拒否

光秀は安土掌握、朝廷工作と並行し各勢力へ協力を求める手紙を送ります。
光秀がもっとも頼りにしていたのが親友で親戚の細川藤孝。
しかし、藤孝からの返事は「私は隠居剃髪し信長様を弔います。」というもの。
間違いなく味方になってくれると思っていた藤孝からのまさかの返事に光秀はショックを受けたことでしょう。
その後も藤孝宛に「摂津を与える」「自分はもう年だから数年で隠居する。あとは娘婿の忠興殿が治めればいい」などなりふり構わない手紙を送っています。
しかし、細川藤孝が光秀に味方することはありませんでした。
さらに、光秀の想定外は続きます。

想定外③ 筒井順敬協力拒否

光秀と親しく織田政権下では傘下にあった筒井順敬が初めは協力する姿勢を示したもののその後協力を拒否します。
筒井順敬は大和に18万石の所領を持っており筒井軍の参加がなかったことは明智軍にとって大きな痛手になりました。

想定外④ 羽柴秀吉の中国大返し

味方が集まらない中で光秀にとって最大の想定外が起こります。
羽柴秀吉率いる中国方面軍の大返しです。
しかも、この時秀吉は「信長様は生きている」「本能寺を脱出された」という手紙をバラまいていたため摂津などの勢力も秀吉に靡き、さらに大阪にいた四国方面軍を糾合したことで4万を超える大軍に膨れ上がります。
対する明智軍は有力大名の細川藤孝、筒井順敬の不参加もあり兵力は1万6千でした。

最後

光秀は秀吉との兵力差を補うために隘路の山崎にて迎え撃ちます。
しかし、戦局の要である天王山までも秀吉に抑えられてしまいます。
結果的に地の利でも不利に陥った明智軍は大敗。
光秀は撤退途中に落武者狩りに遭い亡くなります。

一年通して見ての感想と新大河『青天を衝け』 

最後に今作『麒麟がくる』の全体の感想を書きたいと思います。
今作の光秀は自分が中心になって動かしていこうというタイプではないので話を引っ張っていく斎藤道三がいる前半は面白かったですね。

途中のオリジナルキャラが幅を利かせていた頃は正直微妙でした。
駒はあれだけ出てくるので本能寺のキーマンにでもなるのかと思ったらそんなことはなく後半はそんなに必要性がなかったように思います。
それよりも細川藤孝や筒井順敬との関係や光秀、羽柴間の考え方の違いなどに時間を割いて欲しかったと思います。

本能寺へのプロセスは動機の部分は微妙でしたが朝廷などをしっかり描いていた所は高評価でした。
特に正親町天皇はいい味出してましたね。
光秀の最後に関しては死を描かないのはいいとして山崎まではしっかり描いて欲しかった。

今作で一番良かったのは新しい信長像で描いていた所です。
母親に愛されなかった故に承認欲求の塊になった信長というのは本当に新鮮で面白かった。
むしろこの信長を主人公で見たかったと思うぐらいでした。

さて、来週からは新大河ドラマ『青天を衝け』が始まります。
主人公は日本資本主義の父と言われた渋沢栄一。
幕末から明治への時代の変化、古い経済体制から資本主義への転換を渋沢栄一の視点でどう描くか注目したいと思います。

それではまた来週
いじょ~流水でした。

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この記事を書いた人

歴史好き/読書好きな一般サラリーマン
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